#031 気を付ける
【老師】
なんか他にあったら、何でも。
修行するって言うことは、皆さんが考えてることと違うってことぐらいは、わかって欲しい。
やり替えることじゃないですね、作り替える事ではない修行って。
その前に、やって欲しいことは、本当にどうなっているかって事を見届けてほしい。
もしその上で、なんかまずいことがあるんだったら、言ってください。
不思議に見届けてみると、自分の思ってる事と違う、こんなにうまくできてるかって言うぐらい、うまくできてる。
【質問者】
見届けるって言うのは、ハッキリするとこまでやる?
【老師】
こうやった(手に持った扇子を立てる)時にハッキリしてるでしょう?
なんか半信半疑ですか?(笑い)
【質問者】
いいえ。
【老師】
それだけゃない?見届けるって、そんな難しい事はない。
カチッ(扇子で机を叩く)こうやって聞き届ける。
【質問者】
今こういう場でこう話聞いて、それが起こったらパン!(手を叩く)そうだって思うけど…
【老師】
これ、思うの?
カチッ(扇子で机を叩く)
【質問者】
違う、違う(笑い)そうじゃなく。
【老師】
ねぇこれ、そうだと思う範囲じゃないでしょう。
【質問者】
わかる、でもない?
【老師】
もっと、確かなことでしょう。
言葉で言うと、そうだとか、わかるって言うのだけど。
動かす事の出来ないほど、カチッ、一点の曇りもないほど確かでしょう?カチッ。
そういうことに触れてるから、わかったとか言うのでしょう、カチッ。
思うんじゃない、叩いたらそういう風になると思うんじゃない。
そんな程度の事はじゃないよね、もっとちゃんとしていること。
だけど答えがそうやって出て来るというところに、もう一つ私たちは見なけらりゃならないのは、やっぱり正直だから、ここで(頭を指しながら)理解しているだけだなぁって言うことが、そういう風に”思える”って言わせるんですね。
ここ(頭を指しながら)理解しているだけの範囲だから。
【質問者】
確かに理解している自覚があるというか…。
【老師】
それは必要だけども、その理解よりも、もっと確かなことがあるじゃん、カチッ。
それ実物です。
実物は理解よりも、もっと確かです。
【質問者】
さっき、やり替えるとか、そういことじゃないってありましたけど…
【老師】
カチッ(扇子で机を叩く)、こうやって聞く時に、やり替えられるかしら?この音を聞くのに。
【質問者】
普通、日常生活の中ではそれが、そう”思える”わけです。
その自分が考えを付けたことに対し、そうじゃない見方をしようという努力というか、日常的にすることは意味があるか?邪魔になるか?ならないか?と言ったら…
【老師】
日常的って言ったって、厳密に言ったら、日常的って想像しているだけであって、実際の自分の生活っていったら、今こうやっている他ないんですよ。
【質問者】
お家に帰ってからでも?
【老師】
お家に帰った時でも、帰ったらこうやって、お家に帰った様子があるだけですよ。
ここで、こうやっているのとなんだ変わらないですよ。
【質問者】
う~ん、そうなんですけど。
【老師】
みなさん、本当にそういうこと、やっぱりよくわからない。
【質問者】
ものには用途がある、用事があるから、そこにあるっていう風な…
【老師】
用事がなくったって、ここに居るかもしれん。
【質問者】
用事がなくてもあるものは…
【老師】
爪楊枝じゃん。(一同笑い)
【質問者】
ちょっと、もうよくわからなくなりました。(笑い)(一同笑い)
付いたものを取るような作業を、頭の中で付けた事をいやいやっていう…
【老師】
カチッ(扇子で机を叩く)、聞こえたものをどこで剥がすんですか?
【質問者】
聞こえたものは、ちょっと無理なんですけど。
【老師】
(扇子を広げる)見たものをどこで剥がすの?
【質問者】
扇子を広げたって思うけど、そうじゃない、その様子があるっていうような…
【老師】
そんな事言わなくたって、このとおり(扇子を広げ、ひっくり返しながら)、こうやってちゃんとついてくるじゃないですか?実際は。
【質問者】
余計な事しなくていいってことですか?
【老師】
余計な事をする必要ないでしょう?
こっち(扇子をひっくり返しながら)の方が、確かなんでしょう?
あなたが余計な事をするより、こうなっている時とこうなってる時(扇子をひっくり返しながら)、こうなるんでしょう?
【質問者】
でも、なんとなく思い替えないと、そういう風にならないっていうか(笑い)
【老師】
ほんとに?思い替えないとこういう風に(今度は紙をひっくり返しながら)ならない?
【質問者】
いや、癖があるので…
【老師】
そんなことないでしょう?思い替えなくたって、あなたが思い替えなくたって、なるでしょう?ちゃんと。
【質問者】
それもわかるんですけど…
【老師】
だから、わかったらいいじゃないですか?
わかったら、この事実にやっぱり用がある、考え方じゃなくて。
わかったのに、考え方で終わらせていくんでしょう?
わかったら、この事実に用がある、それが非思量を使うということでしょう。
【質問者】
う~ん、気を付けておくとかじゃないですよね?
【老師】
気を付けないと、そっち行っちゃうでしょう?
【質問者】
はい。じゃ気を付けます。
【老師】
そりゃそうです。
人任せにそうやっていたら無理でしょう。
誰の事か知らないでいるわけだから、人任せじゃ。
だって、何から何まで自分の活動ですよ。