#045 気を付けてないと厄介
【質問者】
坐禅してると、先ほども階下のシャッターの巻き上げる音がしてると「シャッターやな」と勝手に判断してる、そこで止めておけばいいのでしょうか?
「これ灯油を売りに来てる車の音楽やな」とか、どうしても一瞬で判断してしまいますが、そこで止めておけばいいのでしょうか?
【老師】
もちろん、それ以上やっちゃいけない。
それよりも、コン!(机を叩く)こういう音と、コン!(机を叩く)こういう音と、自分で聞き分けなくたって、こんなにハッキリしてる、いいじゃん。
それ、なんか名称をつけないと、ハッキリしないように思うから…
【質問者】
それが勝手に出てしまいます!
「あっ、シャッター」とか勝手に出てしまいます。
【老師】
知ってるからね、うん。
知ってるから、それに名称を付け始めると、下手をするとすぐ続いて、それに対して思いが出て来るようになってる。
一番、酷(ひど)いのは、こんなふうに思いを扱っちゃいけないって言って、扱わないように自分はしてるつもりで、扱ってる(笑い)。
これ、一番始末の悪いことですよ(笑い)、気が付かないんだもん。
だって、まともに自分では、思っただけで、それ以上思わない方がいいって言って、手を付けないようにちゃんと修行しなきゃって、全部それ思いですからね。
本人は、一生懸命まじめにやってるつもりなのに、全部思いを付けているんですよ、気が付かないよ、ほとんどの人。
これくらい、気を付けてないと厄介なんだね、思いなのか、思いでないのか、わからないんだよ、おっしゃるとおり。
だけど、話してみれば、そういうことでしょう?ねぇ。
【質問者】
気持ちがそっちに引っ張られるけど、すぐ目の前を見るように切り替えるというと、おかしいですけど…
【老師】
作りごとをするんじゃないですね、音そのものだけに、いるだけだもんね。
「シャッターの音だって名称を付けないように、頑張らなくっちゃ」じゃないですよ(笑い)。
そういうふうに聞かなくちゃ、じゃなくて、ガラガラガラ、っていうだけじゃない。
だけど、瞬時のうちに音じゃない方に行くんだよね(笑い)。
気が付いたら、ガラガラってそれだけに、こっち(胸のあたりに手をやる)の生身がそうなってるでしょう?
そうやって終わっていくんでしょう?ガラガラって、あと何もしないじゃない?(笑い)
だけど考え方はそのあとに、ダーッって出て来る(笑い)。
だから、考えと事実はこれくらい違うよね、考えの中で事実を探っても無理!ないから。
どっかで話してたら、おもしろいこと言う人がいて、外国の旅行に行ったら、そこの景色を見てみたら、「なんだぁ、写真と同じだぁ」(笑い)。
おもしろくないですか?みなさん。
「ここの景色、写真と同じだぁ」どっちを大事にしてるの?(笑い)実物と写真、ね?非常に変な気がする私なんか。
「どっかでみた景色だ」って写真で見た景色をすごい撮ってる、何してるんだろう?って(笑い)。
そうやって見るもんじゃないでしょ?旅行に行って実物にふれるって言うことは、そういう見方をすることじゃないでしょ?
そんなことしてたら、何にもおもしろくないじゃないですか?
間違いなく写真と実物は違いますよ。
ちょっと見には、全く同じように見えるんだよ、全く違うよ(笑い)。
全く違って、本物の方を大事にしないんだもんねぇ。
だから、「あぁなんだ、写真と同じだぁ」って言って、それで行っちゃうんだもん。
それで旅行に行って、そこを本当に見て来たように思ってる。
何も見てこない、頭の中に浮かんでる写真、それを思い浮かべただけで終わっちゃう(笑い)。
これ、おもしろくない生き方だねぇ。
自分が初めて、誰も見たことのない世界を、そこに行って垣間見るだもんねぇ、こんなにおもしろい世界はないじゃない。
だから帰って来て、いろんな話が出来るわけでしょう?聞く人も、「ええ!そんなことがあったの?」とか。
「あそこの前でねぇ、人がチョロチョロしててね、声かけたら」って、そんなの写真の中で絶対出てこない話だからね(笑い)。
本当にそこに行って、ふれた人しか喋れない話。
「あそこのレンガの上を歩いて、物がその上にあって、足を乗せたら、ひっくり返りそうになった」とかね、これ旅行に行った楽しい話でしょう(笑い)。
「危ないと思って、隣の人の肩に手をかけたら、なんか叱られた」とか(笑い)。
本当に、たわいもないようなことだけでも、そういうことが本当は面白い話でしょう?作り話でもなんでもない。
ものを食べたってそうでしょう。
「ああ、おいしい」とか、本当につまらない、ボキャボリー?ボキャブリー?とか。(一同笑い)
ほんと言語が足りなんだね、表現力がまったく足りないよね、自分で本当に味わった味わいを、自分の言葉で喋れないんだもん、おもしろくないじゃない?
他の人が食べた味わいはどうか知らんけど、自分で食べた味わいは、自分の言葉でそれを表現するくらいの能力があってもいいじゃない?
まぁ、そんなことですね。